公演案内

その他 主催

HUB-IBARAKI ART PROJECT 尾角典子 展覧会

※終了しました

生成の庭

2025年12月04日 (木) 〜 2025年12月21日 (日) 12:00開演 / 19:00終了

※木金土日のみ開催

茨木で集めた人々の声をもとに、AIと自然が共存する「庭」を来場者とつくる体験型展覧会
会 場

茨木市福祉文化会館(オークシアター)3階

チケット
購入・予約

入場料:500円(花の種付き)
大学生以下無料(要学生証提示)
茨木市在住・在勤 平日のみ無料(要証明書提示)

お問い合わせ (公財)茨木市文化振興財団 TEL 072-625-3055

2024年に茨木市文化振興財団に移管されリニューアルした「HUB-IBARAKI ART PROJECT」。二年目となる今回は、京都とロンドンを拠点に活動するアーティスト・尾角典子を迎え、大阪では初めてとなる個展を開催します。本プロジェクトは、アーティストが茨木市をリサーチすることを軸に、そこで生まれる学びや気づき、対話をもとに作品が立ち上がる過程を重視しています。
尾角は、イギリスでアニメーションを学んだのち、コラージュを基盤としたアニメーション作家として活動をはじめました。断片を切り取り、重ね合わせ、新しい物語を立ち上げるその方法は、近年のインスタレーションやVRといった多様なメディアへと展開しても、一貫して彼女の制作の根幹にあります。神話や哲学から量子力学などの現代科学に至るまで、幅広い領域への関心をもとに異なる要素を結び直すその姿勢は、常に「コラージュ」という思考に支えられています。
​​尾角が茨木でのリサーチでまず着目したのは、「堆積層 (地層)」という視点でした。物質や記憶が時間とともに積み重なり、断絶や変容を経て新たな景色を生み出す。そのプロセスを、彼女は「茨木市をかたちづくってきた人々の声」を素材として収集し、コラージュの技法に重ね合わせました。さらにAIという異質な技術を共存させることで、アナログとデジタルが交錯しながら、土や植物が育まれる「庭」のように生成と循環を繰り返す空間を構築します。
人々の声はコラージュの断片であると同時に、この土地と未来をつなぐ層となります。「生成の庭」と題した本展は、完成作品を提示する場ではなく、情報や記憶、土壌や循環といった多様な要素が重なり合い、変化していく体験の場です。来場者は単なる観客にとどまらず、この循環を担う一つの要素として加わり、新たな時間の層をともに築いていきます。
会場となる福祉文化センターは、長年地域で親しまれてきましたが、まもなく取り壊される予定です。本展を通して来場者に手渡される花の種が、この場所がなくなってもそれぞれの生活の中に芽吹き次の土壌へとつながっていくことを願っています。(ディレクター:内田千恵)

 

アーティスト:尾角典子

私の関心は、「変容」するものそのものです。土地に根ざした民話や語りのように、時代や人々の手を通して形を変えながら受け継がれていくもの、そして現代ではデジタル技術を介して新たな形へと変容していく物語にも強く惹かれます。それらは単なる物語ではなく、物理的な土地や環境とも絶えず影響しあう、生きた情報のエコシステムだと捉えています。こうした情報の循環や変容の過程に注目するなかで、私は記憶や土壌、環境の断絶という現実にも目を向けるようになりました。

かつて出来事は土に積み重なり痕跡を残していましたが、アスファルト化によってその記録は途絶えつつあります。しかし一方で、人工的に整えられた風景や造花のような模倣も、新たな「堆積層」として読み解けるかもしれません。テクノロジーが自然や記憶に介入する現代において、私たちが「時空を超えたエコシステムの一部」として循環を捉え直すことは、新しい視点を得るために欠かせないと感じています。

茨木での制作では、市民の方々と出会い、声を聞くなかで、多様な時間と関係性が折り重なって存在していることを実感しました。人々は日々の営みを通じて街をひとつの「庭」として育んでいます。その営みはやがて層となり、痕跡となり、掘り起こされ、新しい景色を生み出す養分へと変わっていくでしょう。

今回の展示「生成の庭」では、そうした声を集め、デジタルとアナログを交差させ、土の循環を意識しながら、生きた場をつくることを試みました。庭のように要素は互いに作用し合い、芽吹き、変化していきます。リサーチ期間中のワークショップでは、参加者が言葉をコラージュし循環させることで、新しい景色や関係性を発掘しました。来場者もまた、この庭の循環の一部として関わり、未来へつながる種をまいていく存在となります。

さらに、この会場に飾られていた木村さんの薔薇の花は、都市や人、時間との関係性を示す象徴として響きました。そして会場が来年取り壊されることも、生成と消失、循環のメタファーとして本展示に重なっています。

「生成の庭」は、完成された作品ではなく、関係性の循環そのものを体験する場です。この庭に立つことで、来場者自身もまた都市や他者、技術、土とのつながりを感じ取り、新たな視点の種を持ち帰っていただければと願っています。

【プロフィール】

尾角典子

Photographer:Miki Takahira

1979年 京都生まれ。2005年 Royal College of Art アニメーション 修士。2003年Chelsea College of Art and Design ファインアート・メディア卒業。
ロンドンと京都を拠点に活動。哲学や科学、神話や民間伝承など多様な要素を組み合わせながら、コラージュを中心にアニメーション、インスタレーション、パフォーマンスなど幅広い表現を展開している。VRやAIなどの最新技術も取り入れ、解釈や意味の揺らぎを探る作品を生み出している。
主な展示やパフォーマンスに「# 拡散展」十和田市現代美術館 space、2024)、「THAT LONG MOONLESS CHASE / その長い月のない追跡」(金沢21 世紀美術館 &21+、2023)、「VOCA 展 2019(上野の森美術館、東京)、「The Interpreter」(QUAD Gallery、イギリス、2015)など。

 

アドバイザー:雨森信
ディレクター:内田千恵


主催
(公財)茨木市文化振興財団 072-625-3055

助成
(一財)地域創造 (公財)花王 芸術・科学財団

後援
茨木商工会議所 茨木市観光協会

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